Technicsのイメージが変わった!Technics AZ100とSONY WF-1000XM5の実機レビュー比較

EAH-AZ100とWF-1000XM5を徹底比較
- デザインと装着感
- 音質のキャラクター(8Ω的柔らかさ vs 6Ω的キレ)
- ノイズキャンセリングと外音取り込み
- 機能と対応フォーマット
- 通話性能
- バッテリー持ちと使い勝手
- 比較表でチェック
デザインと装着感

EAH-AZ100とWF-1000XM5は、いずれも小型化を進めた最新モデルですが、方向性には違いがあります。AZ100は片耳あたり約5.9gと軽量化され、専用の三層イヤーピースが標準で付属しています。このイヤーピースは、装着時に上部は柔らかく、下部は硬めという構造で、耳の奥に安定して収まる工夫がされています。そのため、耳の圧迫感を最小限に抑えながらもしっかり固定され、長時間のリスニングでも快適に使える点が特徴です。実際に使用すると「軽いのに安定している」という感覚が強く、装着感においては非常に完成度が高いと感じられます。
一方、WF-1000XM5は同じく片耳5.9g程度ですが、ソニー独自のフォームタイプイヤーピースが採用されています。こちらは遮音性が高く、耳に密着することでノイズを物理的に遮断する役割も果たします。ただし、密着感が強いぶん人によっては長時間で疲れを感じやすい場合もあります。没入感を重視するならXM5、自然なフィット感で快適に使いたいならAZ100といった使い分けが考えられます。
音質のキャラクター(8Ω的柔らかさ vs 6Ω的キレ)

音質の傾向は、この2機種で明確に分かれます。AZ100は磁性流体ドライバーを搭載したことで、歪みを抑えながら柔らかく自然なサウンドを実現しています。低音は深く伸びやかで、ボーカルは透明感と余韻があり、まるで昔の8Ωスピーカーで音楽を聴いているような、ゆとりと広がりを感じられます。特にバラードやアコースティック系の楽曲では、しっとりと音が広がる印象が強く、リラックスして音楽を楽しめるのが魅力です。
一方、WF-1000XM5はソニーらしく全体のバランスが取れていますが、輪郭のはっきりした音が特徴です。低音は厚みがあり、力強く、EDMやロックなどテンポの速いジャンルと好相性です。音の切れ味やスピード感を求める場合に強みを発揮し、6Ωスピーカーのように硬質でシャープな表現をするのがXM5といえるでしょう。
つまり、柔らかく包み込むような音を楽しみたい人にはAZ100が合い、迫力とキレで音楽に没入したい人にはXM5が合います。両者とも高音質ですが、その方向性の違いが選択のポイントになります。
ノイズキャンセリングと外音取り込み

ノイズキャンセリングの性能は両機種ともに高水準ですが、得意とするシーンが異なります。EAH-AZ100は、街中やカフェといった中程度の騒音環境に強く、耳障りな環境音を自然に抑えてくれるのが特徴です。ただし、飛行機や電車のように大きな低周波ノイズが常に響いている場面では、キャンセルの際にわずかなホワイトノイズが感じられることもあります。一方で、外音取り込み機能は非常に自然で、声や周囲の音を違和感なく耳に届けてくれるため、会話や買い物時には特に使いやすい仕上がりになっています。
WF-1000XM5は、逆に飛行機や地下鉄などの大きな騒音に強みを発揮します。ソニー独自のアダプティブノイズキャンセリングが環境に応じて自動で最適化されるため、遮音性は業界トップクラスです。ただし、外音取り込みに関しては自然さは十分に高いものの、AZ100ほど「素の耳」に近い印象は得られないケースもあります。没入感を求めるならXM5、環境と調和しながら快適に使いたいならAZ100という使い分けが適しています。
機能と対応フォーマット

機能面では両機種とも充実していますが、方向性が異なります。EAH-AZ100はドルビーアトモスに正式対応しており、ヘッドトラッキングと組み合わせることで映画館のような立体的な音場を体験できます。また、LDACとLE Audioに対応しているため、最新規格での高音質再生や低遅延通信を活用できるのも強みです。さらにマルチポイントは最大3台まで同時接続可能で、スマホ・PC・タブレットを切り替えながら使いたい人には便利です。
WF-1000XM5は360 Reality Audioに対応しており、音楽ストリーミングサービスと組み合わせるとライブ会場のような臨場感を味わえます。マルチポイントは2台までですが、ソニー製デバイスやAndroid端末との親和性が高く、安定した接続が期待できます。なお、LE Audioについてはアップデート対応が予定されており、将来的な進化にも期待できます。つまり、複数端末の同時利用やドルビーアトモス対応を重視するならAZ100、ソニー独自のエコシステムで統一したい場合はXM5が選びやすい選択肢となります。
通話性能
EAH-AZ100とWF-1000XM5は、どちらも最新の技術を取り入れて通話品質を大幅に向上させています。AZ100は「ボイスフォーカスAI」を採用し、自分の周囲だけでなく相手側の雑音も軽減する仕組みが特徴です。例えば、相手が外で通話していても環境音が大きく聞こえにくくなり、双方向でクリアな会話が可能になります。さらに6基のマイクを活用してノイズを処理しているため、風切り音や人混みのざわつきも効果的に抑えられます。実際に使うと、屋外や移動中でも相手の声がはっきり聞こえやすいのが印象的です。
一方のWF-1000XM5は、骨伝導センサーとAIによるノイズリダクションを組み合わせ、自分の声をしっかりと相手に届ける点に強みがあります。周囲が騒がしい環境でも声の輪郭を保ったまま伝えられるので、発信側の聞き取りやすさを優先した設計です。ただし、相手側の環境音までは処理しないため、双方向でのノイズ低減という点ではAZ100ほどではありません。つまり、自然な会話を重視するならAZ100、自分の声を確実に届けたいならXM5という選び分けができます。
バッテリー持ちと使い勝手
EAH-AZ100は、バッテリー性能で大きな強みを持っています。ノイズキャンセリングをオンにし、さらにLDACで接続しても約7時間の再生が可能で、条件を緩めれば最大12時間の駆動時間を実現します。これは日常的な使用では1日持ちやすく、長時間の移動や外出にも安心できる数字です。また、アプリ側ではノイズキャンセリングや外音取り込みを100段階で調整でき、イコライザーも細かくカスタマイズ可能です。タッチ操作の割り当ても自由度が高く、自分好みに使い勝手を整えられる点も評価できます。
WF-1000XM5は、ノイズキャンセリング+LDACで約6時間、最大で8時間と、AZ100よりも短めの駆動時間となります。ただしケースとの併用で合計24時間前後使えるため、実用性は十分です。アプリの操作性は直感的で、ソニー製デバイスとの親和性が高く、音質設定やモード切り替えもスムーズに行えます。つまり、長時間使用でバッテリーの安心感を求めるならAZ100、操作の分かりやすさやエコシステム統合を重視するならXM5が適しています。
比較表でチェック
ここではEAH-AZ100とWF-1000XM5の主要な違いを一覧できるよう、表形式で整理します。細かいスペックや特徴を文章で追うより、表にすることで一目で比較できるのが利点です。読みながら自分にとってどの項目が重要かを意識すると、購入判断がしやすくなります。
項目 | Technics EAH-AZ100 | Sony WF-1000XM5 |
---|---|---|
発売年 / 価格 | 2025年 / 約36,000円 | 2023年 / 約38,000円 |
重量(片耳) | 約5.9g、小型軽量化 | 約5.9g、小型化 |
装着感 | 三層イヤーピースで快適、耳に自然に収まる | フォームイヤーピースで高い遮音性、やや密着感強め |
音質の特徴 | 柔らかく自然、8Ωスピーカー的な余裕ある鳴り方 | シャープで力強い、6Ωスピーカー的なキレ |
得意ジャンル | バラード、アコースティック、ジャズ | EDM、ロック、ポップス、映画鑑賞 |
ノイズキャンセリング | 中程度の騒音に強い、自然さ重視 | 大音量環境に強い、没入感を重視 |
外音取り込み | 非常に自然、日常会話に向く | 優秀だがAZ100ほど自然ではない |
特殊機能 | ドルビーアトモス、ヘッドトラッキング、マルチポイント3台 | 360 Reality Audio、マルチポイント2台 |
通話性能 | AIボイスフォーカス、相手側のノイズも低減 | 骨伝導センサー+AIで自分の声を明瞭に伝える |
バッテリー | 最大12時間(ノイキャン+LDACで約7時間) | 最大8時間(ノイキャン+LDACで約6時間) |
このように一覧にすると、AZ100は「柔らかい音質・長時間使用・自然な外音取り込み」が特徴であり、XM5は「強力なノイズキャンセリング・シャープな音質・ソニーエコシステムとの連携」が強みだとわかります。いずれも完成度が高いですが、自分がイヤホンに求めるものによって選択肢は変わってくるでしょう。
どちらを選ぶべきか?総評
- AZ100が向いている人
- WF-1000XM5が向いている人
- 筆者の実体験まとめ(Technicsのイメージが変わった話)

AZ100が向いている人
EAH-AZ100は、柔らかく自然な音質を好むリスナーに適しています。磁性流体ドライバーによる歪みの少ない再生は、クラシックやジャズ、バラードなどを落ち着いて聴きたいときに特に映えます。低音が深く余裕のある響きを持つため、長時間聴いても疲れにくく、リラックスしながら音楽を楽しめるのが大きな魅力です。
さらに、最大12時間という駆動時間は、日常使いだけでなく出張や旅行でも安心して利用できる要素です。外音取り込みの自然さも際立っており、街中での会話や買い物時にスムーズに環境と共存できる点は日常生活で大きな利点となります。複数端末を同時に扱えるマルチポイント3台対応も、仕事用PCとスマホを頻繁に切り替えるような人には便利です。
つまり、音楽を自然に楽しみたい人、長時間使用する機会が多い人、そして複数のデバイスを効率的に使いたい人に向いているのがAZ100です。
WF-1000XM5が向いている人
WF-1000XM5は、強力なノイズキャンセリングを最優先するユーザーにおすすめです。飛行機や電車といった騒音の大きい場所でも周囲の音をしっかり抑え、静寂の中で音楽に集中できます。音の輪郭がシャープで力強いため、EDMやロックなどのジャンルで迫力あるサウンドを楽しみたい人にはぴったりです。
また、ソニー独自の360 Reality Audioに対応しているため、ストリーミングサービスと組み合わせれば臨場感の高い音楽体験が可能です。通話においては骨伝導センサーが声を正確に拾うので、周囲が騒がしい状況でも相手に自分の声を明瞭に届けやすいのも魅力です。
操作面でも、ソニー製スマートフォンやウォークマンとの相性が良く、エコシステム内で統一すると安定感があります。したがって、没入感のあるリスニングやソニー環境での快適な利用を求める人にはXM5が適しています。
筆者の実体験まとめ(Technicsのイメージが変わった話)

私はこれまで、Technicsの音に対して「やや硬派で、自分の好みには合わない」という印象を持っていました。特に昔のモデルは解像度は高いものの、やや冷たさを感じることが多く、長時間聴くには疲れてしまうことがあったのです。ところが、EAH-AZ100を実際に使ってみると、そのイメージは大きく変わりました。
まず最初に驚いたのは、音の柔らかさです。まるで昔のホームオーディオで使っていた8Ωの大型スピーカーを思い出させるような、余裕のある鳴り方を感じました。低音は深みがありながらも決して重すぎず、ボーカルは透明感と艶があり、音楽全体が自然に広がります。以前のTechnicsに抱いていた「硬さ」は消え、むしろ温かさを感じさせる方向に進化していると実感しました。
さらに良かったのは、長時間の駆動時間と装着感です。外出中にバッテリー切れを心配せずに済む安心感は非常に大きく、専用のイヤーピースも自分の耳にしっかりフィットして快適でした。これによって、移動中や作業中でも気兼ねなく使い続けられます。
一方で、ソニーのWF-1000XM5も非常に完成度が高く、強力なノイズキャンセリングやシャープな音質は魅力的です。しかし、自分の耳に合っていたのはAZ100でした。結果として「Technicsは自分の好みではない」という固定観念を覆され、ブランドに対する見方が大きく変わったのです。これまで敬遠していた人にこそ、一度試してほしいと思える仕上がりでした。